研究概要 |
本研究は倉庫や支店の配送費の削減だけでなく,小売側の在庫コストの削減も考慮したより現実的なモデルを提案し,その解法を開発したものである.具体的には,まず配送費および在庫コストをそれぞれの片っ方だけを先に最小化し,その前提条件の元で他方を最小にするモデルを作成し,解法を提案した.まず,配送費を優先するモデルでは,配送計画問題を配送ルート決定問題および配送スケジューリング問題に分類し,それぞれの部分の最適化における新しい解法を提案するとともに,配送平準化の元でトータルコストが最小になるように両部分を統合した.配送ルート決定問題ではMinimum Spanning Tree法とSFC(Space Filling Curve)法を組み合わせた配送ルート決定方法を提案し,改良配送スケジューリング問題ではGAH(Generalized Assignment Heuristic)法を用いて配送グループを作成するとともに,各配送グループの配送日はフォワード・バックワード平準化技法を用いて決めることにより配送,在庫,および欠品のトータルコストを最小にすることができた.次に,在庫費用を優先するモデルでは,在庫費用が最小になるような配送頻度および配送間隔を決める方法を提案し,そのもとで各配送点の配送パターンを作成する.この配送パターンを配送費最小のもとで効率よく組み合わせることにより計画期間内の配送計画を一気に作成する方法を提案した.また,配送計画問題はいわゆる(l、m)分枝型在庫モデルを前提条件としており,このような在庫システムにおいては川下の在庫水準や需要情報を川上段階でも把握することによりBullwhip効果の軽減や在庫水準の削減が可能であるとされている.しかし,在庫補充の意思決定方法に用いるエシェロン在庫水準に各小売における在庫偏在情報が含まれていないので,在庫を補充する間隔を一定にしても欠品コストが増えたり,期末の在庫が多くなったりすることがある.このような問題点を解決するために,本研究では予約点方式を考案し,在庫の偏在による平均在庫水準の増加量を理論的に求めるとともに,シミュレーションにより提案法の評価を行った.最後に,配送ルートを決定する際にはさまざまな制約が存在し,それらの制約をすべて考慮すると単純TSPよりはるかに時間がかかってしまう.特にVRP問題のヒューリスティックス解法ではTSP解法を組み込んでいるものが多く,よりスピーディな計算が要求される.そこで,本研究ではSFCに着目し,SFCの問題点を分析し,改善を行った.その結果,スピードをほとんど犠牲せずに解の精度を5%から10%まで上げることができた.今後,タイムウィンドウつきVRPや時間帯により走行時間が変動する用件などを考慮したより現実的な配送計画問題をモデル化し,戦略的なサプライチェーンモデルとして発展させることは大いに意義あるものであると思われる.
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