研究概要 |
社会システムは,情報システムの導入によって,どのような問題解決能力を獲得することができるのであろうか.この課題に取り組むため,知的な分散を主体を基盤とした相互作用に注目し,集合知能工学的な立場から,社会における情報システムの実施過程に関する実態の把握や,モデル化とシミュレーションを行なった. 具体的には,サイバーコモンズに着目し,社会情報における知識の流通に関して,インターネット上の成長する社会情報学事典の構築に取り組んだ.また,情報の組織化に関して,情報空間におけるカオス的挙動を生成するとともに,社会的ジレンマ,境界生成,集団の生成と再組織化の解明を図った.ことに,組織知能の研究をレビューするとともに,日本的経営システムにおける特性の解明,操作的オーガニゼーション概念に基づく組織設計シミュレータの構築を行った.さらに,組織硬直化と再組織化に関して,パーソナリティや態度変容に着目したエージェント・アプローチに基づき,シミュレーションを行い,派閥ないし情報境界の生成を観察した.また,情報技術の発展に伴う生産流通情報ネットワークに関して,組織間構造の進化過程や仲介型組織間構造の有効性を明らかにした, 以後,これらの結果にもとづいて,社会における情報システムの構築手順に関するknow howとknow whyを考察し,将来の情報技術導入に関するシナリオを描くことや,さらに,進んでは,社会が,どのようにして情報の意味を形成しているのかについて解明を試みる予定である.
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