研究概要 |
1. 序 研究分担者(加藤)らは、大地震の前の準静的すべりに伴い第二種空白域が生じるというモデルを提出してきた。平成9年度には,このモデルから期待される大地震発生後のプレート内部の地震のメカニズム解の変化を実際のデータで確認した。平成10年度には,地震活動の再検討と,数値モデルの高度化を行った. 2. 大地震後のプレート内地震活動の変化 三陸沖に発生した大地震後のプレート内部の地震活動の変化をZ値とR値という二つの指標を用いて調べた.その結果,1989年,1992年,1994年のいずれの地震においても,その後1〜2年間,二重深発地震面の上面の活動が活発となり下面の活動が低調になっていた.このことは,大地震前に大きな準静的すべりがあれば、プレート内部で地震活動の変化があってもよいことを示している。 3. 不均質性を導入したモデル 摩擦パラメータに不均質性を与えたシミュレーションを行った結果,アサイスミックなイベントがエピソディックに発生することがわかった.また,これらのイベントによりプレート内部の応力場もエピソディックに変化することが確かめられ,プレート内地震の活動やメカニズム解の変化が,このようなアサイスミックなイベントの検知の手掛かりとなることがモデルから検証された. 4. まとめ 空白域の客観的検知の手法については,残念ながら完成には至らなかった,しかし,小地震のメカニズム解を多数決定するマスター・ソリューション法や,人為的な地震カタログの変化に鈍感でプレート内の応力場の変化に敏感な指標であるR値を開発したことにより,プレート内部の応力の変化を客観化することができた.プレート内部の地震活動がプレート境界のすべりと相関していることが,モデルと観測の両方で確かめられたことにより,第二種空白域の発生メカニズムが当初の仮説どおりであった可能性が高くなった.
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