研究概要 |
まず研究代表者は,研究計画に基づいて,岩屑流の底部に不安定が生ずる具体的なすべり速度を求めた.その結果,岩屑流に不安定を生ずる速度閾値は10m/sぐらいのオーダーで,容易に到達しうることが明らかとなった(Kobayashi,1997). 一方,分担者はいくつかの岩屑流(岩瀬川,開田,Mt.St.Helens)の堆積物を調査し,岩屑流堆積物の底部に境界層がありそうなことを明らかにした.またその流動機構は,すくなくとも停止前にはplug flowに近い状態になっていたことを明らかにした(Takarada et.al.,1999). 本研究期間中に分担者が米国留学したため,共同研究に一定の困難が生じたが,この困難を克服すべく,代表者と分担者はE-mailにより頻繁に情報・意見を交換し,却って研究の推進が大いに図られた(本報告の交換文書参照). この課題の研究を進めるのと合わせて,代表者は岩屑流の運動メカニズムに関連する研究をレビューし,改めて自身の仮説の位置づけも行った(小林,1999). レビューの結論は,岩屑流のメカニズムは運動段階(発達-,流動-,堆積段階)ごとに分けて考えるべきものであり,唯一のメカニズムが一つの岩屑流のはじめから終わりまで終始成立しているわけではない.その意味では,代表者の仮説も例外ではなく,底部境界波モデルは,地すベりが次第に加速してある限界速度を超える辺りまでに適用を限るのが適当である.
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