研究概要 |
九州の活火山の山麓に分布する4例の岩屑なだれ堆積物に関する野外調査を行い,特に,九重火山の「松の台岩屑なだれ堆積物」および由布岳火山の「塚原岩屑なだれ堆積物」に関しては,野外調査に加えて,流れ山を構成する岩塊の古地磁気測定を実施した.各岩屑なだれ堆積物の調査結果の概要は以下に述べるが,松の台岩屑なだれ堆積物は,高温部分を含むことが明らかになった.この成果は,「高温岩屑なだれ」の発見,その形成モデルの構築,新しいタイプの火山災害の可能性の指摘という本研究のねらいに対する重要な成果である.とくに,「冷却途中での溶岩ドームの崩壊」による岩屑なだれの存在を指摘できた意義は大きい. 1. 九重火山「松の台岩屑なだれ堆積物」 この堆積物は,我々の予察的な調査から高温岩屑なだれ堆積物の例と考えられた堆積物である.流れ山を構成する岩塊の磁気的性質から,少なくとも堆積時に高温であった部分が存在することが明らかになった. 2. 由布岳火山「塚原岩屑なだれ堆積物」 構成岩塊の磁気的性質からは,測定例が少ないが,高温と考えられる部分を見いだせなかった. 3. 雲仙火山「島原岩屑なだれ堆積物」 この堆積物は,1792年の眉山崩壊に伴う堆積物であるが,とくに高温を示す証拠は見出されなかった. 4. 霧島火山「小林岩屑なだれ堆積物」 この堆積物に関しては,今回の調査では十分な資料が得られなかったが,いくつかの流れ山の露頭では高温であった(崩壊前の可能性も含めて)と考えられる岩塊が含まれており,今後検討する必要がある.
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