研究概要 |
プラスチック製品は我々の周囲で数多く使用されており、その使用量は年々増大している。これに伴い廃プラスチックの量も膨大になってきた。従来使用済みプラスチックは、埋め立てなどの方法により廃棄されてきたがその能力には限界がある。また、焼却による処理はダイオキシンをはじめ多くの有害な化学物質の排出を招くことが知られている。このような問題を解決し、簡便で有効なプラスチックの処理方法を開発する目的で本研究に着手した。本研究は,平成9年度に続くものであり現在までに得られた成果を基礎としてさらに研究を発展させた。 汎用プラスチックとして知られるポリスチレン(PSt)、ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を試料とした。これらの材料に地上の到達する太陽光の波長範囲(>290nm)に光吸収種(chromophore)を持つ化合物を添加物や異種結合の形で導入した。いずれの場合にも紫外-可視吸収スペクトルによって290nmより長波長側に光吸収種が導入されたことが確認された。これらの試料に岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所に設置された大型スペクトログラフ(OLS)を用いて260-700nmの単色光を照射し、化学構造の変化を、紫外-可視吸収スペクトル,FT-IRスペクトルにより、分子量の変化をGPCにより評価した。その結果、何れのプラスチック試料においても光分解による酸化生成物の増加、分子量の低下が観測された。また長波長側に光吸収種を導入した場合、光分解のしきい値が長波長側に移動し,光分解が促進されることが確認された。これらの結果は、290nm以上に光吸収種を持つ添加物または異種結合を廃プラスチックに導入することにより廃プラスチックを太陽光の下で分解することが可能であることを示している。
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