研究概要 |
本研究は,バイオレメディエーションを利用して有機塩素化合物で汚染された地下水を浄化することを目的に,水相系において菌体の増殖、有機塩素化合物分解の速度論について実験的・理論的に検討し,その速度論を確立しようとしたものであり,以下のことが明らかになった。 ・Pseudomonas putida LAM 1002による1,2-ジクロロエタンの分解においては,エタノールを添加して菌体を活性化し,増殖能力を高めることにより,2,000ppmもの高濃度の1,2-ジクロロエタンを素早く分解することができた。100〜2000ppmの濃度での1,2-ジクロロエタンの分解率は1週間で90%以上を示し、残存する1,2-ジクロロエタンを10〜30ppmにまで減少させることができた。分解生成物を定性的に同定したところ,分解生成物を定性的に同定したところ,2-クロロエタノール,クロロアセトアルデヒド,モノクロロ酢酸を経て,塩素が無機塩素イオン化され,無害化されていることが明らかになった。 ・Acinetobacter calcoaceticus LAM 12580による1,2-ジクロロエタンの分解においては,エタノールを添加して菌体を活性化させなくても,1,2-ジクロロエタンを唯一の炭素源として利用し,50〜1000ppmの濃度の1,2-ジクロロエタンを素早く分解することができた。その分解率は90%以上,残存する1,2-ジクロロエタンは環境基準の40ppm以下であり,本菌体の1,2-ジクロロエタンに対するバイオレメディエーションへの有効性が示された。また,その場合の菌体の増殖にはMonodの式が適用でき,求めた菌体収率,最大比増殖速度,飽和定数の増殖パラメータを用いることで,菌体増殖速度および有機塩素化合物分解速度の定式化を行うことができた。
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