研究概要 |
近年、海綿や海鞘などの海洋生物から特異なピロロイミノキノン構造を有する新規アルカロイドが多数単離されている。これらの海洋アルカロイドは、強い抗腫瘍活性を示し、新しい抗がん剤のリード化合物として注目されている。昨年度は、ピロロイミノキノン骨格の新規構築法の開発に取り組み、マカルパミンA,D,I,Kの全合成を達成した(Tetrahedron 1998,54,8999-9010)。本年度は、昨年度の研究に引き続きピロロイミノキノン骨格の位置選択的官能化の開発研究に取り組んだ。 ピロロイミノキノン環6位の置換基は、活性中心と考えられるイミノキノン部に直接結合しているため、イミノキノンの電子状態に大きな影響を与え、更に抗腫瘍活性にも影響を及ぼすと考えられる。従ってピロロイミノキノン環6位への位置選択的置換基導入法の開発を試みた。我々は、すでにN-Boc-インドリンのリチオ化反応を利用したインドリン環7位の位置選択的官能化の手法を開発し報告している(Org.Syn.1996,73,85-93)。今回、この手法を、昨年度開発したマカルパミン合成における鍵中間体である6-メトキシ-1,3,4,5-テトラヒドロピロロ[4,3,2-de]キノリンのBoc誘導体に適用し、6位へ位置選択的に様々な置換基を導入することに成功した。更に、この手法の有用性を実証するために6位にp-ヒドロキシペンジル基を有するピロロイミノキノン型海洋天然物ペイユタミンの合成を試み、その最初の全合成に成功した(Tetrahedron Lett.1999,40,1713-1716)。これらの手法は、様々なピロロイミノキノン型天然物およびそのアナローグの合成に適用可能であり、ピロロイミノキノン構造を有する新規抗がん剤開発のための一助となるものと考えている。
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