研究概要 |
最近ゴルジ装置の細胞質側に、今まで形質膜にしか存在しないと考えられていたβ-spectrin,ankyrin,dynaminのホモログがゴルジ装置に存在することが報告された。さらに我々が全一次構造を明らかにしたGCP372およびラットホモログGCP364、GCP170、GCP112、p115を始めとして245kDa,210kDa,200kDa,130kDaの新しい高分子ゴルジ装置細胞質側局在蛋白質の発見が報告されている。現在も未知の蛋白質検索の有効な道具となるヒト自己抗体やゴルジ装置に対するモノクローナル抗体を用いて盛んに検索がおこなわれている。我々も肝炎患者血清自己抗体が認識する230kDaのゴルジ装置局在抗原を見いだし(C.S.F.,1996)、さらに現在も自己抗体を用いて未知のゴルジ装置局在蛋白質を検索している。私たちは、これらの蛋白質のゴルジ装置における役割を解析する第一段階として、これらの蛋白質の内、II型膜蛋白質GCP364とペリフェラル膜蛋白質GCP170、GCP112/GM130およびp115についてゴルジ局在機構の解析をおこなった。 GCP372/GiantinおよびGCP112/GM130はC末近傍のコイルド-コイルドメインがゴルジ局在化に必須であった。GCP170およびp115はリン酸化と膜結合能が密接な関係にあり、リン酸化ドメインがゴルジ局在化に重要な働きをしていた。 これらの局在機構にはいずれも他のゴルジ装置蛋白質との相互作用を強く示唆している。ここで示したゴルジ細胞質側局在新規蛋白質と他の蛋白質との相互作用によりゴルジ装置をとりまく蛋白質のネットワークを構築し、これは単にゴルジ装置の構造の支えとなっているだけではなく機能的なネットワークを構築していると考えられる。さらに今後の課題としてGCP170およびp115のリン酸化に関与しているゴルジ装置局在kinaseの検索はゴルジ装置の構造、機能を理解するために重要な寄与ができると考えられる。
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