研究概要 |
CDGS-I型の線維芽細胞において最も明確に現われる異常はLipid-linked oligosaccharide(LLO)のサイズ変化であるが、これは培養条件、特にFCS中の糖タンパク質および遊離マンノースにより変動し易いことが最近明らかになってきた。また、Freezeらはマンノースの添加によりCDGS細胞のLLOのサイズが正常化することも報告していることから、培養線維芽細胞をグルコース及びマンノースを含まない培地中で代謝標識し、その時、LLOを正常化させるのに必要なマンノース濃度を解析した。その結果、健常者細胞ではLLOを50%正常化させるマンノース濃度はいずれも約7μMであるのに対し、患者細胞では28,49,42μMであった。従って、CDGS-Iではマンノース代謝が異常であることを示し、フォスフォマンノムターゼ活性が減少していることと一致する。またタンパク質画分の分析からGIc_3・Man_5・GN_2経路でもペプチドへの転移が起こっているいることを示した。 一方、CDGS-I型ではDol-P-Man合成が減少するため、不完全なLLO合成が起こっていたが、Dol-P-ManはLLO合成のみでなく、GPI-アンカー前駆体のマンノース供与体でもあり、CDGS-1においてGPIアンカータンパク質合成にも異常が生じている可能性がある。そこで[^3H]-マンノースで代謝標識後GPIアンカー前駆体を抽出し、亜硝酸分解後あるいはBio-Gel P-4クロマトグラフィー、により構造を解析した結果、健常者細胞では完成した構造であったが、CDGS細胞では未完成な構造がほとんどであり、CDGS-IではGPI-アンカー生合成にも異常が生じていることが明らかになった。GPI-アンカータンパク質にはN-CAM,Poなど形態形成に重要なタンパク質も多く、これらの異常がCDGS-I型の小脳形成や神経障害の原因であるかも知れない。
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