研究概要 |
ラット胸腺を研究材料に、種々のイソプレノイド化合物によるアポトーシス誘導能を調べた。炭素鎖長15のファルネソール(FOH)と20のゲラニルゲラニオール(GGOH)において顕著な誘導能がそれぞれ25μMと15μMの濃度でみられた。更に有機化学的に合成したFOHとGGOHの派生物【ファルネシルアルデヒド(FCHO)、ファルネシル酸(FCOOH)、ファルネシルリン酸(FP)、(R,S)-2,3-ジヒドロ-FOH、(R,S)-2,3-ジヒドロ-FCHO、(R,S)-2,3-ジヒドロ-FCOOH、(R,S)-2,3-ジヒドロ-FP、ゲラニルゲラニルアルデヒド(GGCHO)、ゲラニルゲラニル酸(GGCOOH)、ゲラニルゲラニルリン酸(GGP)、Z,E,E-GGOH.Z,E,E-GGCHO、そしてE,Z,E-GGOH】の効果も調べた結果、GGOH、GGCHO、そしてGGCOOHが強いアポトーシス誘導能を示した。この3者による作用点を追究するために、ジアシルグリセロール(DG)あるいはホスファチジルコリン(PC)共存下での効果を調べた。GGOHはPC合成を直接阻害すること、GGCOOHは、恐らくPC分解を促進することにより間接的にPC合成を阻害すること、そしてGGCHOは部分的にPC合成を阻害することが判明した。また、これらの化合物の代謝を調べた結果、GGOHとGGCOOHではその化合物が代謝されにくいのに対してGGCHOはすぐに代謝されてしまうことが分かった。放射性GGOH、GGP、そしてゲラニルゲラニル二リン酸を用いてのプレニル化蛋白質の分析では、GGPでの21-28kDaへの蛋白質に取り込みが最も高かった。以上の研究から胸腺細胞においてイソプレノイド代謝系とアポトーシス誘導現象はGGOH、GGCHO、GGCOOHとPC合成系あるいは未知な系との作用を介して関連することが明らかとなった。
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