研究概要 |
私たちの研究室で見つけ,世界的注目を浴びるようになった糊代を持ったタンパク質(トラッピン)に関する研究を4年間に渡りこつこつと続け以下のような成果を得た。(1)気管及び大腸における発現細胞の同定:エラフィン(Trappin-2)が気管と大腸に多く存在することを見出していたが,その細胞レベルでの局在部位を抗体を用いる免疫組織染色とmRNAを捕まえるインサイチュハイブリダイゼーションにより詳細に検討し,気管・大腸ともに上皮のゴブレット細胞で合成され粘液とともに外に分泌されることを明らかにした。外界からの微生物の侵入を効果的に防ぐ役割を果たしているものと推定される。(2)トラッピン遺伝子の分子進化:糊代に相当するセメントイン部分はRESTと呼ばれるトランスグルタミナーゼの基質をコードしている遺伝子に由来するらしいこと及び糊代部分の後にある機能部分は,SLPIと略称されるプロテアーゼインヒビターをコードしている遺伝子に由来するらしいことを明らかにした。トラッピン遺伝子は,エクソンよりもイントロンの方がよく保存されているという際だった特徴を有する。イボイノシシのトラッピン遺伝子を詳細に解析し,この問題を解決する糸口を得た。すなわち,ジーンコンバージョン(gene conversion)によってイントロンの配列が保存されてきたことを示唆する証拠を得た。
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