研究概要 |
新規ErbBリガンドを同定する目的で、ジャクスタリンアッセイ系を用いてErbB2またはErbB4を活性化するリガンドを発現している細胞株をまずスクリーニングし、ラットPC-12細胞株を得た。この細胞株を用いてPCRクローニングを行い2580bpによりコードされる860個のアミノ酸からなると推定される新規な蛋白質NTAK(Neural-and Thymus-derived Activator for erbB Kinases)を同定した。ラットNTAKには選択的スプライシングによって少なくとも5つのアイソフォーム(α1,α2a、α2b,β、γ)が検出された。さらにヒト神経芽細胞腫細胞株SK-NSH細胞上りヒトNTAKα2a遺伝子をクローニングした結果、ヒトとラットNTAKα2a蛋白質は94%の相同性を示した。予想される蛋白質構造はイムノグロブリンドメイン、EGF様ドメイン、膜貫通ドメインを持ち、これらのドメインの一部においてneuregulinと相同性を示した。一方、NTAK遺伝子はラットの11.5日胚で脳特異的発現を、さらに成体ラットでは各組織で発現が認められたが特に脳と胸線で高い発現を示た。しかし、β-アイソフォームは成体ラットでも脳特異的発現を示した。リコンビナントNTAKα2aは46kDa蛋白質として細胞外に分泌され、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453細胞を分化させた。NTAKα2aはErbB3とErbB4に結合し、ErbB2/ErbB3およびErbB2/ErbB4へテロニ量体を活性化したが、ErbB1およびErbB2のホモニ量体は活性化しなかった。また、NTAKは125I-neuregulinのMDA-MB-453細胞への結合を量依存的に阻害したことから、neuregulinと類似した生物活性を持つものと推測された。一方、γ-アイソフォームにはErbBの活性化能は認められなかった。
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