研究概要 |
オルニチン脱炭酸酵素(ODC)分解の分子機構と生理機能の解明を目指す研究の一環として、9、10年度にわたりODC分解の特異的阻害剤ならびに促進剤の検索・開発を試みた。初年度に簡易ODC活性測定法、in vitroならびにin vivoの簡易ODC分解測定法などの方法を確立し、北里研究所より提供された放線菌培養液などを検索標品としてスクリーニングを開始し、2年間で以下の成果を得た。1,放線菌のブロスのスクリーニングで得られた2個の陽性標品の精製をすすめた結果1個は活性が再現されず中止したが、他の1個は構造解析によりAntimycin Aと同定された(IC50 0.1mg/mI)。2,抗生物質を主とする既知の化合物27種を検索し、Actimomycin DとGlioririnに弱い阻害作用を認めた。3,新たに検索した放線菌のブロスから有望な精製候補株1個を得た。精製した結果4種の活性物質に分離され、NMRスペクトル解析より2種の構造はJulimycin B-IIとJulichrom Ql,4にそれぞれ類似していることが明らかになった。阻害活性はプロテアソーム阻害剤ラクタシスチンとほぼ同等であった。4,新たなカビのブロスに強い阻害活性を認めた。IC50が1μg/ml以下の活性をもつ数成分を含んでおり、精製を進めている。5,アグマチンはin vivoにおけるODCの分解を促進した。その機構はポリアミンと同様にアンチザイムmRNAのフレームシフト翻訳を促進することによってアンチザイムを誘導しODCの分解を促進することが明らかになった。6,アンチザイムmRNAのフレームシフト翻訳に対する種々のアミノ化合物の影響を検討した。その結果、フレームシフトの促進性の化合物の最小構造として,少なくとも1つの一級アミノ基を含む2個の陽電荷が分子内に特定の間隔をおいて存在する構造が考えられた。一方、塩基性アミノ酸、ジアミンのN-アルキル誘導体のうち、シクロヘキシル基やベンジル基を持つ化合物はフレームシフト抑制効果を有した。これらの化合物の細胞内ODCの安定性に対する影響は今後検討する必要がある。
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