研究概要 |
1. ショウジョウバエから脊椎動物のFAK(focal adhesion kinase)に相同な遺伝子を、脊椎動物のFAKに特異的に保存されているアミノ酸残基に対応したdegenerate primersを用いたPCR法によりクローニングし(DFAK56)、以下に示す解析を行った。 (1) 唾腺染色体in situハイブリダイゼーションにより、DFAK遺伝子の位置をバンド56Bから56Dの間にマッピングした。 (2) RNA in situハイブリダイゼーション、免疫組織染色によりDFAK遺伝子及びその産物のハエ胚において中枢神経系及び筋表皮接合部(muscle attachment,apodeme)に発現していること、また免疫蛍光抗体法により、ショウジョウバエ神経由来培養細胞においてDFAK56蛋白質が哺乳類培養細胞の接着斑(focal adhesion)に相当する構造にインテグリンと共に発現していることを見出した。 (3) ショウジョウバエ培養細胞を用いた実験によって、DFAK56蛋白質がインテグリンを介した細胞基質間の接着によりリン酸化が亢進し、その際ショウジョウバエのsrc相同蛋白質の一つであるDsrc41蛋白質と会合していることを明らかにした。 (4) 野生型およびキナーゼ活性を消失させた変異型DFAK遺伝子を誘導的・空間特異的に発現させることのできるトランスジェニックハエの系統(UAS-DFAK56)を作製し、変異体の強制発現による胚発生時の神経系への影響を観察したが、神経形成に大きな影響は見られなかった。 2. PCR法を用いてヒトFAK遺伝子のcDNAにランダムに突然変異を導入した発現ライブラリーを作製し、NIH3T3細胞を用いて細胞のトランスフォーメーションを指標として活性型の突然変異を同定するためのスクリーニングを行った。約30万の変異体をスクリーニングしたが、変異遺伝子の導入によりトランスフォームした細胞は得られなかった。
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