研究概要 |
基本転写因子TFIIDは転写開始前複合体のアッセンブリーに際して核となる分子であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へ変換するうえで中心的な役割を果たす。本研究では転写調節の基本的分子機構を理解するため、TFIIDサブユニット(TAF)の機能について解析し、いくつかの新しい知見を得た。 1. ショウジョウバエdTAF230/出芽酵母yTAF145はそのN末端側約70アミノ酸残基から成る領域にTBP機能阻害活性を有する。またこの活性領域(TAND;TAF N-terminal domain)は機能的に異なる二個の小サブドメイン(TANDI,TANDII)に分割されるが、TANDIと酸性型の転写活性化ドメイン(AD)はいくつかのアッセイ系において互いに交換可能(機能的に等価)である。一方、転写活性化において重要な役割を果たすとされる基本転写因子TFIIAは、TBPとの結合においてTANDIIに対して競合的に作用する。他のグループによるこれまでの知見も考え合わせて、新たにTFIIDの異性化モデル(ハンドオフモデル)を提唱した。 2. yTAF145のTANDI,II(yTANDI,II)をdTANDI,IIで置換したキメラ型TAF蛋白質は、出芽酵母細胞内において選択的な蛋白質分解を受ける。HA tagをN,C末端に付加することによって、この蛋白質分解がN末端側のキメラ型TANDを除去するために働いていることを明らかにした。さらに点変異体あるいはTAND重複型変異体を用いた実験から、AD,TFIIAによるTANDI,IIの逐次的な置換の阻害が蛋白質分解を誘起することが示唆された。
|