研究概要 |
培養細胞をコルヒチンなど微小菅を崩壊させる薬物で処理すると、アクチン繊維形成が非常に強く長期的かつ可逆的に誘導されることを1996-1997年に見いだした。この誘導に関与する因子を同定するための生化学的、分子生物学的検索を行い、以下のことを見いだした。1)その誘導はRhoG蛋白の活性化を介して起こっており、Pl-3Kキナーゼや他のG蛋白rac,cdc42等は関与していないこと、2)また、その誘導は微小管の崩壊を阻害しるタキソール等で前処理しておくと全く起きないことも判明した、これらの結果は、微小管の構成因子でその崩壊と供に放出されてくるRho活性化因子の存在を強く示唆する。この因子を同定するため、1)細胞の大量培養を行い、細胞画分と膜画分に分けた。2)RhoGDI-GST及びRho活性化因子RhoGDI-GST蛋白を別途用意し、これをGST力ラムに結合させ、Rho蛋白カラム、RhoGDIカラムを作った。3)これらのカラムに上記の細胞画分を通し、特異的に結合した蛋白を調べたところ、約52KDaの細胞質蛋白がRhoGDIと強く結合することが判明した。4)この蛋白は、抗体検査で微小菅の主要な構成蛋白でかつコルヒチンと結合するチューブリン蛋白であることが判明した。更に、他の方法で精製したチューブリン蛋白も確かにRhoGDIに結合し、かつその活性を抑制することを見い出した。上記の結果から、細胞運動や形態形成更にシグナル伝達で極めて重要な役割を果たしているアクチン繊維の形成は微小菅チューブリン蛋白によっても制御されていることが世界的に初めて明かになった。今後、どのようなメカニズムでチューブリン蛋白がRhoGDIと結合し、その活性を抑制するのか、その生理的意義は何なのか等を明らかにしていかなけれならない。
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