研究概要 |
本研究は、マウス初期胚へのin situ RT-PCR法の応用を目的としてスタートした。RNA in situ hybridization法が予想以上に高感度な検出系であったのに対し、それ以上に高感度な検出系をin situ RT-PCR法で構築することは出来なかった。しかしながら、コントロール実験を重ねる過程において、いくつかの貴重な研究成果を得ることが出来たので報告する。 (1)マウス9.5日胚の切片を材料とし、in situ hybridization法でHox a-7,a-9,b-6,b-7,b-8,b-9,c-6,c-8,c-9,d-8,d-9の発現パターンを調べた。これらの遺伝子は、神経管や体節において前後軸に沿って領域特異的に発現していた。次に内部での発現を解析するため切片を作成し、後腸の臓性中胚葉においても発現があることを確認した。 (2)3種類のトラップベクターを作成し、エレクトロポレーション法を用いてES細胞に導入した。X-gal染色を指標に興味深いクローンを選別し、ピックアップした。ES細胞において強い発現が検出されたトラップクローンの中のひとつ、Ayu-8008は、マウス8.5日胚では卵黄嚢・体節・神経板に、9.5日胚ではさらに心臓・尾芽に発現を示した。15.5日胚になると脳、心臓、筋肉においても発現を示した。成体では、脳・心臓・肺・腎臓・精巣・膀胱・皮膚などに発現を示した。また、トラップされた遺伝子は、ラットEST(AI548797)と高いホモロジーを示すことが分かった。 (3)Ayu-8008ホモマウスの表現型に関しては、一部成長遅滞が見られるものの、遺伝的背景の影響が予想されたため、C57BL/6への戻し交配を進めているところである。
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