研究概要 |
生体内において、後根神経節細胞は双極細胞から偽単極細胞へと形態変化をとる。培養下において成熟および老齢マウス後根神経節(DRG)細胞は、短期間で偽単極の形態を示す。老齢マウスDRG細胞の場合、偽単極細胞は突起の分枝部にglomerulus様またはswelling状の構造がみられ、分岐部から細い多数の突起を出しているもの(pseudouniplar cell type 2)が観察された。しかし、胎仔・新生仔DRG細胞にはこのような細胞は出現しない。標識色素細胞内注入法、電子顕微鏡の観察にて、glomerulus状の構造は神経突起の一部であることが確かめられた。神経栄養因子(Neurotrophic factors:NTF)は胎生期および新生期に神経細胞の分化・生存、神経突起の伸長などに働くが、培養下における、老齢DRG細胞では、細胞の生存・突起伸長には影響がなかったが、神経成長因子(NGF)はpseudounipolar2細胞の増加を起こすが、NT-3,NT-4,BDNF等の他の神経栄養因子にはその効果はない。さらに、老齢DRG細胞にはNGFに対する高親和性NGFレセプターtrkではなく、低親和性レセプターp75がこれらの構造構成に深く関与していることが認められた。したがって、成熟・老齢DRG細胞になんらかの損傷を受けた場合、突起再形成において、DRG細胞自身に分化に対してのプログラムのようなものが存在し、神経細胞が再生段階に入いった時これが発現し、早急にもとの形態に修復する特性をもっており、NGFはその促進作用をもち、低親和性NGFレセプター(p75)を介して、行われると考えられる。
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