研究概要 |
1.細胞内σ-1受容体を介した情報伝達機構 σ-1受容体の発現クローニングをおこない、Oocyteから調製した膜画分へのσ-1受容体選択的リガンドである[^3H]NE-100及び[^3H](+)ペンタゾシンの結合を測定した。σ-1受容体の膜貫通部位のSer99Ala,di-Leu105,106di-Ala変異によるリガンド結合能は消失した。Tyr106Pheのみでもリガンド結合能は著しく制御された。速度論的解析より、これらのアミノ酸置換は結合親和性を低下させることが明らかとなった(FEBS Lett,445,19-22)。 2.PC12細胞に対する一酸化窒素(NO)の毒性の速度論的特性 : NO放出半減期の影響 一酸化窒素(NO)を放出するNO-donorを用い、PC12細胞のNO毒性を調べたところ、NO-donorのうちNOR2およびNOR3の2誘導体にのみ、アポトーシス様の細胞毒性が観察された。細胞毒性を示したNO濃度は、従来の1/10〜1/100の濃度であり、NO放出半減期と曝露時間に依存していた。この低濃度NO-donorによる細胞毒性は、アスコルビン酸、グルタチオンおよびテトラヒドロビオプテリンにより抑制された(Eur.J.Pharmacol., in press)。 3.チロシン水酸化酵素遺伝子の発現制御機構におけるV-1分子の機能的役割の解析 V-1分子過剰発現PC12D細胞株では、発現ベクターのみを導入した対照株と比べてチロシン水酸化酵素(TH)、ドーパ脱炭酸酵素及びドーパミンβ-水酸化酵素mRNAの発現量が増加し、カテコールアミン産生が著名に増大した(J.Biol.Chem., 273,27051-4)。V-1過剰発現株および対照株のc-jun NH2-terminal kinase(JNK)の発現量を調べた結果、totalJNKの発現量はV-1過剰発現株と対照株とで変化は認められなかったが、リン酸化JNK発現量はV-1過剰発現株で増大していた。また、核抽出液中のリン酸化c-junの発現量も上昇していた。以上の結果と、V-1が核内に存在せず、細胞質において他の蛋白と複合体を形成することから、V-1分子が、V-1結合タンパク質とのタンパク質間相互作用によってJNKが仲介するシグナル伝達系と共役し、c-junを介してTH遺伝子の転写を支配している可能性がある。
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