研究概要 |
視床ニューロンの軸索は大脳皮質の4層で終止し、枝分かれを形成することが知られている。我々はこれまでに培養下においてもin vivoと同様な視床皮質投射が形成されることを示してきた(Yamamoto et al.,1989,1992,1994,1997)。本研究では、4層で生ずる軸索の停止や枝分かれを制御する膜結合型の因子の特性を明らかにするために、化学的に一旦固定した大脳皮質切片上で視床組織片を培養し、視床からの軸索伸長ならびに枝分かれ形成について調べた。 まず神経成長活性に層特異性があるかどうかを調べるために、視床軸索を層と平行に侵入させたところ、視床ニューロンの軸索は5、6層から白質にかけて成長が著しかった。ところが、固定皮質切片をあらかじめPI-PLCよって処理すると、深層での成長は変化しないのに対して浅層での伸長が有意に増加した。また、ノイラミニダーゼ処理によって深層での軸索伸長が若干減少した。分枝については、固定皮質切片上においても標的である4層で特異的に枝分かれが生ずることが分かった。皮質切片をあらかじめノイラミニダーゼで処理しておくと枝分かれの個数が有意に増加し、標的層特異性は若干弱まることが示された。 以上の結果から、皮質浅層に分布するGPIアンカー型の分子が軸索伸長に抑制的に働いて層特異的な視床軸索の終止に貢献していること、並びにシアル酸自身あるいはそれを含む分子が軸索伸長には促進的に逆に分枝形成には抑制的に作用して層特異的な枝分かれの形成に関与している可能性が示唆された。
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