研究概要 |
本研究の目的は,幼児を対象に縦断的に観察を行い,幼稚園における情動表出とその制御について,その生起頻度や文脈を分析することにある。また,保育者が幼児の情動表出に対してどのように働きかけているのかを分析することにより,情動の制御が社会的に学習されていく過程について明らかにすることも目的とする。 本年度は,大学附属幼稚園の4歳児クラス(35名)の幼児とそのクラス担任の保育者を対象に,週1回程度の観察を継続して行い,幼児の怒り(anger),悲しみ(sad)等のネガテイヴな情動の表出とその制御を中心に,分析を行った。 その結果,4歳児は幼稚園で怒りや悲しみの情動を表出する頻度が比較的多いが,3歳の時に比べると,自分の気持ちを相手に伝えようとし,言葉を伴う情動表出が多くみられた。情動を表出する文脈(原因)は様々であり,3歳の時からみられる遊び場や物をめぐるトラブルのほか,一緒に遊んでいるときに遊びのイメージが合わずにトラブルになることもあった。対人的なトラブルの場合の4歳児の行動特徴としては,相手に向かって言葉で自己主張をする場合が多く,3歳の時にみられたような相手に対してすぐに手が出てしまうこと(攻撃行動)や何も言えずにただ泣く姿は減少した。これらの情動表出に対する保育者の働きかけとしては,4歳児の場合も,子ども同士でトラブルを解決させることは少なく,保育者が介入を行い,情動を表出した理由を幼児に説明させ,幼児の気持ちを受け止める場合が多かった。今後の研究では,5歳児を継続して観察を行い,幼児の情動表出や制御の変化および保育者の働きかけの変化について検討していく予定である。
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