研究概要 |
第一次調査(平成9年度)において,現代青年の友人関係の特質と充実感,自己像の関連との関連について中学・高校・大学生について全体的な傾向を検討した。その結果,友人関係の特質そのものが,これまで考えられてきたような「希薄化」では説明しきれない様相を持つことが示唆され,友人関係に関する尺度について再検討の必要性が確認された。これらの結果は,日本心理学会第61回大会(発表論文集p229)及び日本青年心理学会第5回大会(発表論文集Pp.13-14)において発表された。 第二次調査(平成10年度)として,大学生に対して質問紙調査を行い,現代青年に特有の友人関係に関する尺度の項目について再検討した。また自己愛的人格の病理的側面についての尺度を作成し,信頼性・妥当性を検討した。また両尺度間の関連を考察し,自己防衛的な友人関係を取る青年は,自分自身の自己愛が,他者の評価に規定されてしまいやすいこと,また他者からの注目や賞賛を常に得ていないと自己愛を維持できないために,友人から傷つけられることを警戒している点が見いだされた。これらの結果は日本発達心理学会第10回大会(発表論文集p313)に発表した。 第三次調査として,青年の自己記述と現代青年の行動と特質の関連について検討した。すなわち現代青年に特徴的な行動傾向を示す者と,それ以外の者との間で,自由記述における自己概念の側面に違いが見られるかどうかを検討した(立教大学教職研究9号)。 第四次調査として,第二次調査の結果に基づいて,青年の友人関係および行動傾向を独立変数とし,自己評価および人格障害(境界人格障害,自己愛人格障害),社会的スキル,自己概念の発達の関連についての質問紙を中学高校生,大学生に対して行い,結果について解析中である。今後は,面接調査などへの研究計画の展開を検討中である。
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