研究概要 |
本研究の目的は,平成9年度科学研究費課題研究(奨励研究A:課題番号09710094)と合わせて2年計画で,子ども自身の思考・運動のリズム(自己制御リズム)と他者との間で課題を介して共有されるリズム (相互交渉リズム)が,子どもの動作制御の発達にどのような関係を持って機能しているのか,様々な相互作用場面を設定し,体系的に分析することである。本研究では,実験的に(1)リズムの形態(相互交渉リズム (自-他間で共有するリズム) ;自己制御リズム(自己制御に関わるリズム))と(2)動作(自体操作(自分で自分の身体を操作する) ;対象操作(自分の身体を使って対象を操作する))の要因を操作した。それに従って設定された感覚運動的協応課題(旗上げ課題,木槌課題)や,意味的制御課題(折り紙課題)の結果を踏まえて,まず藤田(1998)では,リズム動作の発達的変化過程の特徴を明らかにし,感覚運動的「協応」過程から認知的「制御」過程へ至る発達モデルを提案した〈「協応」過程と「制御」過程は発達の方向が異なり, 「協応」過程は自-他間から自己内へ, 「制御」過程は自己内から自-他間へ至ることを示唆した〉。次に, 2つのリズム(相互交渉リズムと自己制御リズム)が子どもの中で特に統合しにくい「動作制御」過程に注目した。具体的には, 3〜5歳児を対象に「折り紙課題」を用いて,言葉と動作によるリズミカルな介入がどのように子どもの折り紙図式の理解と折り紙操作の獲得を促すのか,大人から子どもへの介入プログラムを作成してその妥当性について検証した。その結果,困難な操作を含んだ課題になるほど,大人と一緒に子どもも掛け声(折り紙歌)をリズミカルにかけながら折ることが困難になる。しかし,その一方では,そのような主体的でリズミカルな構成行為が可能なほど,一連の構成過程を自己モニターしながら再生することも容易になることが明らかにされた。
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