東北の平場農村は、他の地域に比して女性の農業への関与、とりわけ地域営農への取り組みが全国的にみてさほど活発ではないであることが指摘されている。しかし事態は一様ではない。その多様性の要因と今後の展望をさぐるために、本研究では、東北地方の平場農村における女性の活動と地域営農へのかかわりについて、宮城県N町と山形県Y町との調査にもとづき比較検討を行った。両地域とも歴史的には大地主制の展開がみられ、戦後相対的に大規模な自作水稲作経営が発展した地域である点では共通している。とはいえ、今日の農村女性の活動の性格をみると、両者のあいだには大きな差異がみうけられる。前者のばあいには、女性の農業への関与が(i)数戸規模での水稲作の共同作業への関与および(ii)家族経営で完結する農産物流通活動への参与にほぼ限定されているのにたいし、後者のばあいには、(i)(ii)にとどまらず、女性の手による村落規模での共同的な農産物販売活動が根づきつつある。この差異は、たんに女性の農外就労へのアクセスの容易さという要因によるだけではなく、(i)米過剰を目前に控えた時期における両村における対応の相違(米価維持/産直)、(ii)女性の地域営農を支えるインフラ整備にとりくむアクターの有無(行政、農協の選択の相違)にも大きく規定されていることが明らかになった。また、地域営農を企画するさいに、横並びの原理を廃して各農家の個性を重視したアレンジを行うという組織論的な工夫も、その定着におおきくあづかっていることが示された。今後継続して、双方の地域の女性の生活史に関する聞き取りを行い、個々人レベルでの選択と行政・農協の選択との連関についてより詳細な検討を行うことを課題としたい。
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