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現代日本における子ども期の消失過程に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 09710128
研究種目

奨励研究(A)

配分区分補助金
研究分野 社会学(含社会福祉関係)
研究機関筑波大学

研究代表者

土井 隆義  筑波大学, 社会科学系, 助教授 (60217601)

研究期間 (年度) 1997 – 1998
研究課題ステータス 完了 (1998年度)
配分額 *注記
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1998年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1997年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
キーワード子ども観 / 少年非行 / 近代的自我 / 飽和社会 / 再帰的自己 / 表現的個人主義 / 不登校問題 / 学級崩壊 / 対教師暴力問題 / ナルシシズム / アノミー
研究概要

近年、大人と子どもの境界が崩壊しつつある。近代が生んだ子ども期という概念が、いま再び消失の時期を迎えているのである。その兆しは先進国において健著であるが、とりわけ日本は突出している。なぜなら、我が国は、世界にも稀に見る高度の飽和社会を実現してきたからである。子ども期とは、近代的自我の形成を前提として誕生した概念である。しかし、その近代的自我は、「社会の進歩」という観念の誕生とほぼ同時に認識されはじめ、パラレルに形成されてきた「社会的構成物」である。すなわち、近代的自我とは、もともと膨張型の社会にフィットするものとして構成されてきたのである。したがって、現代の日本のようにもはや成長の極限に達した飽和社会においては、近代的自我の形成に大きな軋みが生じてくる。その一つが子ども期の消失なのである。
かつての膨張社会における自我は、生存の目的を自己の外部、すなわち社会の側に設定し、そこへ向けて自己を発展ないし改善していくという志向性を持っていた。対して、飽和社会における自我は、生存の目的を自己の外部に設定することができない。生存の境界はもはや拡張していないからである。したがって、本来的に再帰的な構造を持っている近代的自我は、社会に対するリアリティを徐々に喪失させ、行き場を失った自己のエネルギーはその内面へ向かっていかざるを得ない。昨今の自分探しの流行やヒーリング・ビジネスの隆盛は、この自我変容を端的に物語っているが、このような事態は、少年非行においてもその衝動化・短絡化という傾向を招いている。社会に対するリアリティの崩壊は、他者に対する感受性と未来に対する感受性を喪失させるからである。
以上のような社会状況は、学校制度を相対化させつつもある。進歩の観念の喪失したところに、学校への信頼は成立しえないからである。昨今、小中学校で多発する「学級崩壊」や「不登校」の現象は、このことを物語っている。学校とは社会化の機関であるが、自己の本源的・直感的な衝動にしか価値を認めない表現的個人主義的な自己にとって、社会化を目指した外部からの教育はよけいなお節介であるから、彼らにとって学校に行くことは苦痛以外の何物でもないのである。したがって、このような状況は小手先の制度改革では打開されえない。近代的自我を前提とした従来の子ども観をいったん解体し、新しい人間像を構築することから始めねばならない。

報告書

(2件)
  • 1998 実績報告書
  • 1997 実績報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (4件)

  • [文献書誌] 土井隆義: "学校文化とアスピレーション" 社会学ジャーナル. 23号. 125-150 (1998)

    • 関連する報告書
      1998 実績報告書
  • [文献書誌] 土井隆義: "加害者としての少年、被害者としての少年" 犯罪社会学研究. 23号. 90-112 (1998)

    • 関連する報告書
      1998 実績報告書
  • [文献書誌] 土井隆義: "飽和社会における少年非行" 社会学ジャーナル. 24号(3月発行予定). (1999)

    • 関連する報告書
      1998 実績報告書
  • [文献書誌] 土井隆義: "学校文化とアスピレーション" 社会学ジャーナル. 23号. 125-150 (1998)

    • 関連する報告書
      1997 実績報告書

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公開日: 1997-04-01   更新日: 2016-04-21  

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