【研究実績の概要】 本研究の目的は17世紀における日本の民衆がいかにしてリテラシーを獲得していったかということを明らかにするために、地域独自に編纂された往来物などの文字教材を収集・調査することにある。その際、調査のポイントは以下の三点であった。 1) 往来物史上きわめて注目される事例となっている目安往来物の類似事例の調査 2) 地域独自に創作した往来物の収集・調査 3) 17世紀において使用された各種往来物の収集と、その使用形態の調査 すでに平成9年度においては、国文学研究史料館所蔵の歴史文献・文書目録などから、基礎資料の洗い出しを行い、その後、これに基づいて東北地方における各県立図書館・歴史資料館・資料所蔵家等の所蔵文書の調査を実施してきた。平成10年度においてはこれに続いて、関東地方における文書所蔵機関(所蔵者)を中心として所蔵文書の調査をおこなった。 具体的には埼玉県・群馬県・茨城県・福井県などにおける調査をおこなった。当初予定していた西日本の調査には至らなかったが、これらの調査により往来物に限定されない多様な学習テキストの存在が判明した。とくに、訴状雛形集(訴状を作成する際のテキスト)が各地域に存在することがあきらかとなった。 また、新潟県における寺子屋の門人帳(入門台帳)の調査をおこない1本の論文を執筆した。
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