研究課題/領域番号 |
09710234
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 助手 (90290923)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1997年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 民俗芸能 / 伝統と変容 / 観光 / メディア / 意識 / 個人 / 民族芸能 |
研究概要 |
平成9年度の調査研究によって、島嶼部や山間地などの遠隔地の民俗芸能ほど伝統的上演形態が持続し、大都市圏や観光地化したところの民俗芸能ほど変容が進んでいるという、従来の民俗学的知見から予想された状況と、実際の状況はかなり異なり、文化財や観光資源として行政当局やマスメディアとどのように関わっているかといった、それぞれの民俗芸能がおかれた社会的文脈に応じて、持続あるいは変容の様相は様々であるという見解を獲得することができた。平成10年度は、主として前年度未調査の各地の民俗芸能の現況に関する調査研究を行い、基礎的データの収集を行ったが、その結果は、基本的には前年度に得た見解の妥当性を補強する内容であった。それと同時に、それぞれの民俗芸能が演じられている現地の人々や演者たちの上演に対する意識の在り様が、それらの上演形態の決定にいかに影響を与えていかを理解することができた。 例えば、北海道の厚沢部町の場合、町内各地で上演されている獅子舞を期日を定めて一カ所に集まり、上演が行われていたが、そこに居合わせた演者や観客はほとんど現地の人々で、彼らは獅子舞を演じ、見ることに興じていたが、彼らのそうした姿勢が一時休止した獅子舞の再開を実現し、その後の継続を支えていたと考えられた。沖縄市の旧盆に行われるエイサーの場合は、現地の人々がその上演に対して抱いている積極的な関心が、明らかに、踊り方や衣装などの趣向の華美化を進展させる原動力となっていた。また、福井の睦月神事では、神事という名が示すように、芸能の上演自体は必ずしも娯楽的、享楽的とはいえないにも関わらず、近郷から酒食を携えた観客が大勢集まり、会場の大きなホールは満員の盛況で、思い思いに見物を楽しんでいる様子であった。奥三河の花祭など、文化財として著名な民俗芸能や、八代の妙見祭のように自他共に認める観光行事化して催されている場合など、その他の各地の民俗芸能においても、その上演に肯定的な価値を見出し、関わっている現地の人々が少なからず見受けられた。民俗芸能の現況の理解に際しては、こうした現地の人々の意識の在り様に対する配慮は欠かせず、そのためには、個々の事例に対する現地調査を継続して、彼らの意識の実態について、彼らの個人的な意識の様相も視野に納めて、その把握に務めることが肝要であると改めて認識した。
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