研究概要 |
1, 「省」レベルでの「営業税」政策の導入・実効度についての文献・史料の収集を、東京大学東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所東方学文献センター、東洋文庫、一橋大学経済研究所などで行った。 2, 地方財政レベルでの一次史料を中心とした研究計画について、中国の上海市档案館、上海社会科学院経済研究所などでレビューを受けた。 3, 国民政府の策定した各「営業税大綱」の分析と、江蘇、淅江両省における「営業税」の実施状況から以下の点が明らかになった。 (1), 営業税は各国の「事業税」をモデルとして、馬寅初らの経済学者により策定された税制であり、中国の伝統的な税制である牙税などとは性格を異にしている。 (2), 「営業税大綱」という形で実施されたため、各省において課税業種、税率などが統一されず、大きな混乱を引き起こした。また伝統的な中国の地方税が、商業団体の自律性に依存するものであったのに対し、「営業税」は各商店の経営実態にまで踏み込むものであったため、大きな反発を生むこととなった。 (3), 国民政府の強固な支配地域であった江蘇省においても、省財政の逼迫した1931年には、「営業税大綱」を公然と無視する形で旧来の税制の復活がなされた。 4, これらの研究成果の一部を、1998年度広島史学研究会大会シンポジウムにおいて「近代中国紡織業と洋行」として口頭発表した。また、これについては「史学研究」第224号において公表する。
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