研究課題/領域番号 |
09710275
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
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研究機関 | 藤女子短期大学 |
研究代表者 |
杉崎 泰一郎 藤女子短期大学, 一般教育, 助教授 (60235877)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1998年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1997年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 修道院 / 12世紀 / 贖罪 / 奇跡 / 教訓逸話 / 煉獄の誕生 / 修道士 / 贖罪規定 / 奇蹟物語 / グレゴリウス改革 |
研究概要 |
ペトルス・ウエネラビリスPetrus Venerabilsの『奇跡について』De Miraculis、ハイステルバハのカエサリウスCaesarius von Heisterbachの奇跡に関する対話、ウォルター・マップWalter Mapの『宮廷の小話』De Nugis Curialiumなどを主として分析し、修道士が奇跡物語を通して世俗社会を教化していった経過について考察し、以下の結論を得た。ペトルスの物語の多くは、神が自然の法則に反して奇跡を起こして人間を救うものではなく(癒し、失せ物探し、豊穣多産、災害の予言と防止など)、驚くべき出来事を神の教訓的意図と解釈することで改心と悔い改めを促しそうとするものであった。ペトルスの奇跡物語の影響を受けたハイステルバハのカエサリウスは教化対象を庶民にまで広げ、教訓物語に土着信仰の要素を加え、説教に転用できるように物語を簡略かつ具体的なものに仕上げた。ウォルター・マップの史料は、当時の世俗社会において奇跡物語が夥しく流布していた事実と、俗人たちが奇跡物・語を恐れ敬いつつも、暗愚に信じ込んではいなかった事実を伝えている。これらの考察から、12世紀の教会が来世の救済の道筋を理論化し、告解を義務づけ、社会のモラルをコントロールしようとする過程において,修道士たちが前線で果たした広報的な活動が理解された。今後は、このような教会の動きに対する世俗社会の対応についてさらなる考察を進めることにより、12世紀の社会について立体的な理解が得られると思われる。今回分析したのは教会で中心的立場を担っていた聖職者が執筆した史料であったが、民衆の口承伝承に近い、各地の聖職者が記した奇跡物語の分析によって、さらなる理解が得られるであろう。
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