研究課題/領域番号 |
09710303
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
国文学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中山 昭彦 北海道大学, 文学部, 助教授 (80261254)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1998年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1997年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 文学場 / 国語政策 / 言文一致 / 翻訳 / 言説分析 / 表象 / 口語文典 / 自然定義 / 教養主義 / 修養主義 |
研究概要 |
明治三十年代から大正初期の時期に着目し、国語政策、文学の表現上の変遷、近代文学の歴史化の動向と、文学者の芸術家と認知に関する相互関連性を探求して、具体的には次のことを明らかにした。 1. 明治30〜40年代の国語政策に於いては、〈標準語〉と〈言文一致〉による国語の統一が目指され、旧来の文語や方言は撲滅の対象となるが、周知の通りそれは実現されず、結局、〈標準語〉と〈言文一致〉は、方言や文語をいつでもそれらに〈翻訳〉しうる言葉として位置づけられること。つまり撲滅より〈翻訳〉が国語の実際的な役割になってゆくこと。 2. こうした〈翻訳〉という機制からみると、明治末期以降の小説が、会話文に於いて方言を盛んに採用し、しかも、その方言の発話者に対して地の文で内面描写を施す際には、その方言で書かれても不思議ではない内的言語を整った〈言文一致〉体に〈翻訳〉してしまうようになる事態は重要な意味をもっており、いわば1の国語政策の未完結から生み出された〈翻訳〉という言語状況を、最もよく体現し、支えていること。 3. 他方、明治末期から大正期にかけて、近代の文学作品が本格的な歴史化の対象になり始め、近代文学史が刊行されるといった状況の中で、言文一致の創始者が誰かといった議論が盛んになるとともに、たまたま早すぎる死を迎える国木田独歩が、そのころに特に肥大化した新聞メディアに於いて、言文一致の完成者として大々的に葬送されること。 4. また更に同じ時期に、時の首相・西園寺公望をはじめとする政府関係者による文士招待や、芸術院の創設に関するの議論が盛んになり、そうした中で文学者の側から、自分たちを芸術家と見なすための定義が数多く提出され始め、それが2と3で指摘した事態を利用しつつなされること。つまり、文学者が芸術家として相応しいのは、言文一致の使い手であり、しかもそれに十分な歴史的背景があるからだ、といった位置づけがなされていくこと。
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