研究課題/領域番号 |
09710334
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
薩摩 竜郎 東京工業大学, 外国語研究教育センター, 講師 (30272686)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1998年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1997年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ワイルド / アイルランド / アングロンアイリッシュ / アングロ=アイリッシュ |
研究概要 |
ワイルドの生涯・作品については以前から多くの伝記的研究がなされていたが、1990年代に入ってからは、Davis CoakleyのOscar Wilde:The Importance of Being Irish(1994)やDeclan KiberdのInventing Ireland(1996)をはじめ、彼のアイリッシュネスに注目した研究、さらには彼の評論・批評作品の意義に着目した研究が目立っている。 上記ものをはじめとする各種研究書および伝記的資料から明らかになるのは、アイルランドのダブリンからイングランドのオックスフォード大学に進学するという環境の変化が彼にとって一つの転機だったという事実である。ダブリンにおいてはエリートであり秀才の名をほしいままにしたワイルドが、オックスフォードでは「よそ者」「田舎者」として扱われる--これをきっかけにして、ワイルドははっきりと意識的に自らのアイデンティティを作る作業を行うようになり、その行為が後の彼の作品のほとんど全て、さらには実人生にまで大きな影響を与えることになった。この様子は各種資料の分析から十分に跡づけることが出来る。 この観点からのワイルドの創作態度の分析は、単に彼の作品の意味の解明に役立つだけでなく、同時代のアイルランド・イギリスの文化・芸術の置かれた状況の分析にも大きく貢献する。興隆をきわめたヴィクトリア朝イギリスの文化・芸術を支えた、いわば陰の力としてのアイリッシュネスの一例ともなるからである。このことは同時代の両国の文化・芸術に関係する各種資料の分析を通じて明らかとなる。 本研究では以上のような観点からワイルド個人のアイデンティティの問題の分析を進めることによって、The Importance of Being Earnestをはじめとする彼の作品の意義の解明を進め、同時に同時代のアイルランド・イギリスの文化的な関係を見直し、さらにはそれらとより広い政治・社会情勢の関係を明らかにすることができた。
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