研究課題/領域番号 |
09720001
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎法学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大内 孝 東北大学, 法学部, 助教授 (10241506)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1998年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1997年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 陪審制 / アメリカ法制史 / 訴答制度 / 法学教育 / 聖職者の特権 / 刑事司法 / 奴隷 / (法の)継受 |
研究概要 |
本年度も、研究計画の一部である、アメリカ建国期に広く使用された法学教科書の記述の精査、並びに当時のロー・スクールにおいて法学がいかに学ばれたかについての状況調査に努めた。特にタッカによる『アメリカ版ブラックストン』が果たした意義は重要であり、その中でも、「聖職者の特権」に関する記述に注目した。これは、中世以来のコモン・ローの残滓を含みながら、刑事法を近代化するために編み出されたイングランド法特有の産物であるが、これがヴァジニアにおいても機能していたとタッカは言うのである。この点の真偽及び意義を検討することは、刑事司法の問題として「陪審制」にも深く係わることになる。この検討の成果を中間報告として後記論文の形にまとめ、発表した。 その後、主として以下の点につき研究を継続した。当時の法学教育の成果もあり、アメリカ独立前夜には、陪審制は相当に浸透していた。しかし、これにも北部と南部とでは、一口に「アメリカ」と言って済ますことのできないほどの差異がある。さらに、陪審制が比較的浸透していた地域においても、独立後は、その機能が以前よりも限定される傾向にある。すなわち、以前は「事実」及び「法」の両方を含んだ評決を行うことが多かったのに対し、以後は「事実」の評決に限られるようになる。これは概して、イギリスの陪審により近づく傾向であると言える。しかし他方、陪審制と密接不可分である訴答pleadingの制度に関しては、急速に簡潔化されてゆき、イギリスの訴答制度と離れてゆく傾向を示す。この、陪審の機能と、訴答制度との相反する傾向を、統一的にとらえることで、この時代の大きなテーマである「アメリカ法の形成」をより説得的に解明できるのではないかとの見通しを立て、今後の研究につなげることができた。
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