研究概要 |
1,今年度は、主としてアメリカ法における法人ミニマム・タックスと資本再構成を取り上げて検討を行った。 2,租税優遇という観点から租税回避を眺めてみると、「租税回避は租税優遇の濫用である」と考えることができる。その場合、優遇を如何にして規制するかということが立法上の一つの課題となる。そこで、アメリカにおける優遇規制の一手法である法人ミニマム・タックスの内容を概観し、問題点等を検討してみた。 アメリカ法は、租税優遇に一定の政策目的があることを前提としながらも、優遇を過度に利用することによって、税負担を不当に減少させる行為を租税回避と捉え、これにミニマム・タックスで対処しようとしていた。この制度が導入されたことで、税制は以前より公平になったといえる。しかし、その反面、税制が複雑化した結果、納税者の納税協力上の負担は増大してしまった。公平と簡素のジレンマをどう解決していくのかは、アメリカ法における今後の課題であるが、ミニマム・タックスによって採用された租税回避概念、すなわち通常税の租税債務額との比較を通した量的な租税回避概念は、注目に値する。 3,資本再構成とは、法人内部における自己資本と他人資本の再構成である。具体的には、法人と株主との間で証券が交換されることであり、例えば普通株と優先株の交換や、株式と社債の交換などがこれにあたる。 アメリカ法では、交換が条文上の資本再構成に該当すれば、それはE型組織変更として、証券保有者に損益が認識されないことになっている。つまり、税法は企業の資本再構成という行為に対して原則として中立なのである。ただし、想定される租税回避に対処するために、いくつかの租税回避回避防止規定を置いている。今年度の研究では、特に証券ベイル・アウトと呼ばれる租税回避行為に対処する規定および判例を中心に扱った。
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