研究課題/領域番号 |
09720025
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
民事法学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
道垣内 弘人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40155619)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1998年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1997年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 法解釈方法論 / 民法 / 利益衡量論 / 利益考量論 |
研究概要 |
本研究は、バブル経済の崩壊のもたらした金融危機の中で、思わぬ対象を得た。すなわち、抵当権の物上代位や短期賃貸借、さらには将来債権の譲渡に関する最高裁判決が、これまでの判決を実質的に変更し、金融機関側に有利に動き始めたのである。これは、明らかに法典外部的要素を法解釈に取り込んだ作業にほかならない。とりわけ、短期賃貸借における判例は、これまで形式論理のみによっていたにもかかわらず、抵当権者の権利を強める、という至上命題のもとで変動したのである。 我妻テーゼは、このようにして再生した。しかし、このことによって失われた法典外部的要素もある。歴史、沿革、比較法-これらの考慮はかえって少なくなってきた。 これをフランス・ドイツにおける解釈論と比較してみると、その特殊性はあらわになる。両国における解釈論を一言でいえば、約束事が多いことである。約束事から逸脱することはできない。この約束事は、歴史、沿革、さらには確立した学説法理によって形成されている。イングランドにおいてもしかりである。一見、プラグマティックに実用性を重んじているように思われるイングランド法は、アティアとサマーズの指摘に待つまでもなく、多くの約束事からなる形式的な基礎付けをともなうのである。 「約束事」も経済事情も、いずれも法典外部的要素である。したがって、法典内部的な要素のみで自己完結的な解釈論は、ドウォーキンの指摘にもかかわらず、決してとられてはいない。しかし、そうだからといって、「約束事」の多い解釈と少ない解釈との違いは重要である。
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