研究概要 |
本年度の研究進行状況は次の通りである。 まず昨年度明らかになった問題関心を具体的に実証するために,イギリスにおける,ET(ITから名称変更,雇用裁判所)法制およびACAS(助言・斡旋・仲裁委員会)法制の仕組みについて文献研究をすすめた。現在論文を準備中であるが,ACASの個別斡旋件数が多い理由が,ETでしか管轄・処理できない雇用権をACASの関与によって例外的に法的に処理できることになることが,実証できたと考えている。なお,アジアにおける紛争処理法制に関する研究成果は,11で掲示する論文の一部に反映されている。 次に,本年は,日本における労働法の文献を非常に積極的に収集して,日本における労働紛争処理機関をめぐる議論に関する研究を深めた。その結果,日本においては,労働紛争処理機関を立法化すべしという議論は存在するが,労働紛争処理をあくまでも労使自治によって促進するという議論は存在しないことが理解できた。すなわち法政策のありうる選択肢として,労使自治による紛争処理を援助するという立法論が可能であることが理解できた。 以上のように,主に文献による研究を進める中で.新しい発見がいくつかできた。ただ,具体的に論文として結実するには,今しばらく時間がかかるものと思われる。
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