研究課題/領域番号 |
09730046
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済史
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷本 雅之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (10197535)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1998年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1997年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 在来的経済発展 / 在来産業 / 織物業 / 柔軟な専門化 / 労働市場 / 自営業 / 中小企業 / 産地 / 問屋制 / 家内工業 / 工業化 / 家族経済 / 農家世帯 |
研究概要 |
近代日本の産業発展は、業主およびその家族の労働供給に強く依拠する、数多くの小規模経営体を含むものであった。本研究で中心的な検討対象となった織物業に即していえば、中心的な工程である製織工程の担い手に、そのような特色をもつ小経営を、賃織の形で数多く抱え、そこでの労働供給は、農家=自営業経営の保持する労働力配分の自立性に根拠づけられた、固有のパターンが特質となっている。そのパターンを所与の前提とし、そこでの生産活動と製品市場を結び付ける機構の成立が「産地」形成であった。その「産地」が「主体」となって市場競争を繰り広げることが、近代日本の織物業発展の動力だったのである。このような産業発展の在り方は、中小経営であれ、また、農業部門においてさえ、雇用労働が中心を占めるイギリスなどと大きく異なるのみならず、同じく自営業就業といっても、「職人」がイメージされるドイツなど大陸ヨーロッパとも、同列には論じられない特色である。中小経営の存立根拠については、セーベル、ザイトリンらの近年の主張=「柔軟な専門化」論が論議されることが多いが、上記の過程は、クラフト技術や多品種少量生産をその存立根拠としていない点で異なっている。自営業就業に基礎をおいたこのような産業発展の特色は、「在来的経済発展」ととらえるべきのもであり、「柔軟な専門化」論とも異なる「もう一つの工業化」論を提示したものと考える。近代・現代日本の経済発展の特質を、「在来的経済発展」の視角から再検討する作業が、今後要請されると考えている。
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