平成10年度は、まず設置したサーバーによって実験をおこない、仮想市場における、基本的情報伝播システムの分析をおこなった。本サーバーは、所属研究機関に既設の情報コンセントを利用して構内LANに接続され、インターネットに接続されている。インターネットにおけるサーバーは、従来UNIXベースのものが主流であったが、近年WindowsNTをベースとするシステムが急速に普及している。このシフトが、前年度の研究課題の一つであったセキュリティ問題をクローズアップすることになる。サーバーの導入・維持・管理コスト、セキュリティ面の問題など、企業が意思決定を行う際に考慮するポイントは、独立ではない。維持・管理コストとセキュリティコストの対比など、期待費用も考慮に入れると、いくつかのコストはトレード・オフの関係にある。電子商取引をおこなうためのサーバー導入の意思決定問題は、これらのコストを考慮に入れて行われる。本年度における研究の成果の一つは、ネットワーク市場分析で欠かせない費用分析を、小売り業者の観点からおこなったことである。このことは、今後、インターネットを市場とする電子商取引が、普遍化するかどうかということに決定的な意味合いを持つと思われる。 さらに、サイバーモールなどネットワークにおける消費者行動は、サーバーのスループット、心理的待ち時間の問題などに影響を受ける。これは一種の心理的コストとなる。また、消費者はネットワーク接続で明示的にコスト負担を行っているため、従来の価格探索理論を再構築する必要があると考えられる。また、ネットワーク・マナーの普及および法的規制が、消費者のネットワークへの信頼性を保証することになり、電子商取引普及の鍵の一つとなり得る。以上のような観点から、消費者のネットワーク探索行動についての分析もおこなった。これらの成果は、順次紀要において発表する予定である。
|