研究概要 |
Kubota and Takehara[1991]では,状態変数として6種類のマクロ経済変数を選択し,これらの状態変数から推定される過去の経済成長,将来の期待経済成長,及び条件付ボラティリティーと株式リスクプレミアムとの関係を検証した.実証分析の結果,日本市場において,過去の推定経済成長と将来の株式リスクプレミアムとの間に負の相関関係が,将来の期待経済成長とリスクプレミアムの間には正の相関関係が存在することが明らかになった.また将来の経済活動に関する条件付ボラティリティーの増大は,我が国の株式市場では必ずしもリスクプレミアムには結びつかないことを示し,この観測事実について,Abelにより導かれた均衡リスクプレミアム評価式をもとに,投資家のリスク態度との関係を議論した.これに続いてJagannathan,Kubota and Takehara[1998]では,マクロ変数としての賃金指数を観察不可能な市場ポートフォリオの代理変数として,加重平均株価指数に追加することにより,クロスセクションでの個別株式収益率の格差が有意に説明されることが明らかにされている. なお,これら2つの論文で得られた知見をもとに,日本の投資信託についてマクロ経済状態の変化を考慮した運用評価手法を現在開発中である.
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