研究概要 |
本研究では、企業が直面するリスク評価のうち、信用リスクに着目し、信用リスクのある企業の発行する、金融商品価格評価問題を取り扱った。 平成10年度の研究では、Jarrow,Lando,Tumbull(1997)のモデルをベースに、デフォルトに関する同値マルチンゲール測度を用いた価格評価モデルを考察した。Jarrow et alでは、普通社債のデフォルト発生時の回収率として、格付け機関から発表されている統計値が用いられている。デフォルトに関するデータの少ない、本邦市場で発行された普通社債の価格評価を可能にするため、債券価格データから、回収率を推定する方法を提案した。ここでは、発行体の信用格付けクラスの変化が、斉時的、非斉時的な各々の場合について、信用格付けクラス毎に回収率を推定する方法を提案した。 また、以前に金利スワップ契約の信用リスクを、キャッシュフローの発生時点を満期とする、ヨーロピアンスワップション契約を結ぶヘッジコストとして評価する方法を提案している。しかし、この評価では、デフォルトに関する経験確率を用いてヘッジコストの期待値が計算されるため、期間が短いあるいは高格付けである企業の信用リスクを正確に評価できない。このモデルにおいて、同値マルチンゲール測度による期待値を計算することにより、より高い精度でパーレートを算出することも可能になる。 以上のように、信用リスクのあるいくつかの金融商品の価格評価方法について研究成果が得られた。
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