研究概要 |
97年度は、E.Ballico 氏と共同で、very strange curve と言う、ある意味で極めて病的な射影曲線を研究し、これを正標数の代数閉体上の Cohen-Macaulay 斉次整域のヒルベルト関数の研究に応用した。very strange curve の定義イデアルは基礎体の標数より小さい次数の元を殆ど含まないことを示したものである(単なる“strangecurve"では、この性質を持たない)が、未だはっきりしない部分も多く、今後も研究を継続していきたい。 また同年度は、Bayer, Peeva, Sturmfels らによって当時導入されたばかりであった、凸幾何学的に特殊な構造を持った monomial ideal を研究し、これの準素成分がある種の「連結性」を持つことを示した(少し後で、toric ideal の initial ideal の準素成分が同様の性質を持つことが、 Hosten と Thomas によって示されている)。先行する研究が凸幾何学的手法によるものであったのに対し、筆者は、局所双対性等、可換代数的な手法も併用した。この研究は、98年度には、E.Mill,Sturmfels 両氏との共同研究に発展した(現在投稿中)。ここでは、 toric ideal の initial ideal も研究しており、手法的にも、 local h-vector や Alexander 双対性といった新しいものを導入している。 また、98年度は、 Stanley-Reisner 環の Alezander 双対性も研究し、 Cohen-Macaulayな Stanley-Reisner 環 k[Δ] の標準加群の加群構造の情報と、その双対の Stanley-Reisner 環 k[Δ^V]の極小自由分解の(微分写像まで込めた)情報が等価であること等を示した。 上述の monomial ideal や toric ideal の凸幾何学的自由分解の話題は、最近、Bayer,Popescu らによって(凸幾何学的にも可換代数的にも)より精密な方向に発展してきており、筆者も、この方向での研究を続けていきたいと考えている。
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