研究概要 |
Kahler多様体はいかなるときに「良い」Kahler計量を持つかという問題について研究した.ここで「良い」Kahler計量としては,多様体がFanoの時にはEinstein-Kahler計量が考えられる.一般のKahler多様体に対しては,定スカラー曲率を持つKahler計量が考えられるであろう.これらの計量の存在に対する障害として,Einstein-Kahler計量に対しては二木指標,定スカラー曲率を持つKahler計量に対しては板東・Calabi・二木指標と呼ばれる正則ベクトル場のなすLie環の指標が知られている.これまで二木指標に対しては,二木・森田・満渕によりいくつかの性質が示されてきた.一方,板東・Calabi・二木指標については,あまり研究はなされていないようであった.本研究では,二木指標に対して示されているある性質を板東・Calabi・二木指標の場合にまで拡張することができた.具体的には,考えているKahler多様体の正則自己同型群の巾単部分群をとったときに,そのLie環の上で板東・Calabi・二木指標が消えることを,昨年度(平成9年度)の研究により示すことができた.この結果により,トーリック多様体と呼ばれる同じ次元のトーラスの作用する多様体上で板東・Calabi・二木指標を考えるとき,トーラスのLie環の上だけで考えれば良いということが解る.さらに,端的Kahlerベクトル場と呼ばれる,板東・Calabi・二木指標と非常に関係の深いベクトル場の周期性定理も昨年度の研究により示すことができた.尚,これらの結果はFano多様体の時の二木指標に対して二木・満渕が示した結果の板東・Calabi・二木指標への一般化にあたるものである.昨年度の研究に引き続き,今年度(平成10年度)は,板東・Calabi・二木指標をGodbillon・Vey不変量(のある種の一般化)として解釈してやることができた.またこの結果を用いて,板東・Calabi・二木指標を正則自己同型群の指標に持ち上げてやることが概ねできそうであることもわかった.尚,これらの結果はFano多様体の時の二木指標に対して二木・森田が示した結果の板東・Calabi・二木指標への一般化にあたるものである.
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