研究概要 |
今年度も昨年度に引き続き,k-termカルノー空間の間の調和写像について,東北大学の西川青季氏と共同研究を行った. k-termカルノー空間は負曲率リーマン多様体なので,自然にそのコンパクト化が考えられる.カルノー空間をこのように境界付き多様体とみなしたとき,その可微分構造が無限遠の1点を除いて綺麗に定義されることを見出した.また,これに伴って,k-termカルノー空間の間の固有な調和写像の無限遠境界値問題の解の一意性に関する結果を導いた.これらの結果については11月に行われた「山口大学幾何学小研究集会」において,「カルノー空間と調和写像の無限遠境界値問題」という題名で発表した. また一方,東北大学の長澤壮之氏との共同研究を通じて,群同変調和写像の存在定理を証明した.ユークリッド空間や双曲型空間型など,十分大きな等長変換群の作用を持つ非コンパクトリーマン多様体の間の群同変調和写像,すなわちそれらの群作用に関して不変な調和写像を考えると,その方程式を常微分方程式に帰着することができる.われわれはこの常微分方程式をより一般的な状況で研究し,その解の存在・非存在,および一意性などを導き,具体的なリーマン多様体間の調和写像の存在・非存在に関する結果を証明した.また,この結果を論文としてJournal of the Mathematical Society of Japanに発表した.
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