研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、定曲率3次元空間形内の曲面のKenmotsu型表現公式の構成を行い、これを統合的見地から完成させた。 Kenmotsu型表現公式とは、定曲率cの3次元Riemann空間形M^3(c)(resp.Lorentz空間形M^3_1(c))内の(空間的)曲面Mを、その平均曲率関数Hと‘Gauss'写像g:M→S^2(resp.H^2)で記述された一階の偏微分方程式系の解として(局所的に)表現するものである。この表現を得るメカニズムは、定曲率空間形の等長変換群が正規直交標構束に推移的に作用しているという事実のもと、統一的に理解される。 M^3(c)(resp.M^3_1(c))内の平均曲率H一定(CMC H)(空間的)曲面Mが、写像g:M→S^2(resp.H^2)でKenmotsu型表現されるための可積分条件は、gが、c≧0(resp.c≦0)のときは標準単位球面(resp,双曲平面)への、c<0(resp.c>0)の場合にはある計量h_<C,H>をもつS_2(〓CU{∞})への調和写像であることである。この計量h_<C,H>は、|H|<√<|C|>同の場合は特異点をもつが、単位円板D_2上には(完備ではない負曲率)Riemann計量を定める。適当に与えられた境界値条件に応じて、双曲平面から(D^2,h_<C,H>)への調和写像(Dirichlet問題の解)が存在することが分かり、Kenmotsu型表現公式を適用して、それをGauss写像としてもつようなM^3(c)(c<0)内のCMCH(|H|<√<|C|>)完備な単連結曲面が作れることを示した。ちなみに、M^<13>(c)(c>0)内のCMCH(|H|<√<|C|>)空間的曲面は、M^3(-c)内のCMCH曲面と双対関係にあることを注意しておく。 調和写像は2階の楕円型偏微分方程式の解であるが、‘Gauss'写像gによってMに導入されるスピン構造を考えることにより、可積分条件を1階の非線型Dirac方程式として表すこともできる。そのしくみを明確にしたが、その応用についてはこれからの研究課題の一つとなっている。
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