研究概要 |
結び目のデーン手術とは,3次元多様体を生成する基本的な手法である。本年度は,双曲型結び目のデーン手術によるレンズ空間の生成に関する研究を行った。双曲型以外の結び目に対しては,レンズ空間の生成問題は完全に解決されている。双曲型結び目のデーン手術によって,いつどんなレンズ空間が得られるかいう問題の全貌を明らかにすることは依然として困難なことである。現在までに,散発的な現象が知られているに過ぎない。 本研究は,結び目の種数という全く新しい観点から,レンズ空間の生成問題を捉えたものである。研究実施計画の段階では,結び目の種数を1に制限し,さらにレンズ空間の形をも限定する予定であったが,これらの制限を行わずに十分な成果をあげることができた。本年度の主な成果は次の2点である。 1. 種数gの双曲型結び目のデーン手術によってレンズ空間が生じる場合,そのレンズ空間の基本群の位数は,12g-7以下でなければならない。 2. 種数1の双曲型結び目のデーン手術によってレンズ空間は得られない。 また,本研究を進める段階において,合成型結び目および双曲型結び目のデーン手術によるクラインボトルの生成問題に関する研究に対してもまた,関連課題としていくつかの成果を得ることができた。 残念ながら,1の評価は最適とは思われない。今後は,この評価を改善してゆくことが課題となる。
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