研究概要 |
3次元球面S^3内の結び目Kに対し,その管状近傍Vをいったん取り除き,再び別な方法でVを貼り合わせる操作を結び目K上のDehn手術と呼ぶ。このようにDehn手術を通して結び目から3次元多様体を豊富に構成することができる。Thurstonは双曲Dehn手術理論により,もとの結び目が双曲結び目の場合(すなわちS^3-Kが双曲構造を持つとき),有限個の手術を除きDehn手術後も双曲構造を持つことを示した。そこで,その除外される非双曲Dehn手術が重要な研究対象となった。本研究ではSeifert多様体を生み出すDehn手術,本質的トーラスを生成するDehn手術という2種類の非双曲Dehn手術について考察し,以下の結果を得た。 1. Dehn手術によって得られたSeifert多様体のファイバーの“位置"に着目し,周期性をもった結び目に対して、その周期が2より大きい場合にファイバーの位置を決定することができた。その結果,2より大きい周期をもった結び目上のSeifert多様体を生成するDehn手術を完全に決定した。(この結果については専門誌Comm.Anal.Geom.に掲載予定。)周期が2の場合についても“ファイバーがどこからやってくるか?"という視点からの考察は非常に有効であることが期待され,現在も研究を継続中である。 2. 2より大きい周期をもった結び目上の本質的トーラスを生成する手術を決定し,上記(1)の結果とあわせ,2より大きな周期をもった結び目はある特殊な場合を除き非双曲Dehn手術をもたないことを証明した。また,周期が2の結び目上の本質的トーラスを生成する手術は整数手術に限ることも示した。(この結果はPacific J,Math.に掲載予定。)
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