研究概要 |
1, タイヒミュラー空間は大城実解析多様体となり、標識付きリーマン面上の閉測地線の長さのみからなる座標で記述されることが知れられている。このときに必要となる長さ変数の最小個数を私は決定した。また、長さはすべて単純閉測地線から選べることを示した。さらに、長さ変数空間も表示したが、複雑な多項式系で記述されることが分かり、長さ変数によるタイヒミュラー空間の解析は、ある意味で大変となる。 2, 「双曲幾何においては、角度は長さより情報量が多いだろう」というアイデアを私は持ち、標識付きリーマン面上の閉測地線の交角のみからなる座標を新たに導入して、タイヒミュラー空簡を大城実解析的に記述した。また、「このときに必要となる角度変数の最小個数がタイヒミュラー空間の次元に一致する」ことを示した。さらに、いくつかのタイヒミュラー空間にたいしては、角度変数空間が長さ変数空間より容易に表示されることも示した。 3, 角度変数を用いで、タイヒミュラーモジュラー群の表示を試みた。現段階では、一部のタイヒミュラー空間でのいくらかの生成元の表示のみ得られた。基本的なタイヒミュラーモジュラー群の融合積を角度変数で表示することを考察し、一般の群の表示を具体的に決定したい。その際、融合される元の一部は、単純分割閉曲線に沿う回転にでき、角度変数による融合積の表示は長さ変数の場合より見やすいと予想される。 4, タイヒミュラー空間の座標付けの考察から、「フックス詳を行列群に実現できるか」という持ち上げ問題を構成的に証明した。また、以前に導入した一次変換の平方根を用いて、持ち上げのいくつかの性質を得た。さらに、これらの性質から、リーマン面上の閉曲線の特徴付けを、このリーマン面を表現するフックス群の持ち上げて判断できることも示した。
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