研究概要 |
逐次点推定問題においては従来の逐次推定方式に比べ逐次方式を偏り補正することによって漸近的にリスクをより小さくできる場合があることがこれまでの研究でわかっている。この結果が有界リスク問題に対して成立するかどうかについて,母集団が位置母数と尺度母数をもつ指数分布に従う場合に次の二つの研究結果を得た。 1. 損失関数として二乗誤差を尺度母数でわった相対誤差損失のもとで尺度母数を推定するときにリスクがあらかじめ与えられた正定数w以下となるように逐次方式を構成する有界リスク問題に対して偏り補正逐次方式を構成した。提案した逐次方式は従来の方式に比べwが小さくなるときに漸近的にリスクを縮小することがわかり,有界リスク問題に対しても偏り補正方式が有効である例として日本数学会1998年度秋季総合分科会(於大阪大学)において磯貝英一,斎藤和正両氏と共同で講演発表を行っている。 2. 位置母数と尺度母数の一次結合の形の母数を二乗誤差損失のもとで推定するときにリスクが与えられた正定数w以下となるように逐次方式を構成する有界リスク問題について,十分小さいwに対してリスクがw以下となる逐次推定量のクラスを提案した。これはwを小さくするときに2次漸近不偏となる推定量を含んだクラスであるが,位置母数と尺度母数の一次結合の重み付けを表わす係数の値によっては偏り補正逐次方式がリスクを増大する結果となった。この問題においては,2次の漸近不偏推定量ではなく,提案した推定量のクラスで漸近的にリスクを最小とする推定量を用いるとリスクが縮小されることがわかった。この研究成果を平成10年度科学研究費補助金[基盤研究(A)(1)](研究代表者:赤平昌文氏)によるシンポジウム「統計的逐次推測とその関連領域の新展開」(於新潟大学)において磯貝英一,斎藤和正両氏と共同で講演発表している。
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