研究概要 |
通常の偏微分方程式に対する一意接続性ではゼロ初期条件を初期面に与えたときにその初期面の近傍でゼロとなるかを考察するのであるが,さらに境界面に境界条件を附加することで今までは困難とされていたタイプの一意接続性を示した.具体的には強双曲型偏微分方程式に対してDirichlet境界条件の場合だけでなくNeumann境界条件の場合でも初期面がStrongly pseudo-convex条件を満たせば初期面がtime-likeであっても境界と初期面のなす角度がある一定の条件を満たせば境界と初期面の交わりの近傍で一意接続性が成立することを示した.方程式がダランベルシアンの場合は境界と初期面のなす角度が90度未満であればその条件は満たされる.これは境界データ込のCarleman評価を強双曲型偏微分方程式に対して示すことによって成されるが,今回この評価を双曲型だけでなく放物型,楕円型に対しても示した.一つの応用として偏微分方程式の係数を決定する逆問題の解の一意性については、観測を領域のすべての境界ではなく、ある条件を満たす部分領域であればよいことがわかった。この結果は作用素の型には依存しないものであり一般の形状の領域に対しても適用可能である。また熱方程式の解と初期値に対する評価を導いた。これは熱方程式の初期値問題の解の空間のある点の近傍の時刻ゼロの近傍での減衰オーダーから、初期値のサポートの位置の情報を得るもので,いわゆる逆問題のーつである。更にこれと関連して熱方程式及びシュレディンガー方程式に対するAsymptotic Unique Continuationを特殊な重み関数を用いて示すことができた。これはt=(定数)の平面の一部において方程式の解がexponential orderでゼロになるならば、その状態を同じt=(定数)の平面の他の部分(近傍)に伝えるというものである。
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