研究概要 |
最小超対称標準模型(MSSM)の有効ポテンシャルをstop,chargino,neutralinoの寄与まで含めて計算することにより、3つの中性Higgs粒子の質量や評価した。また有効ポテンシャルの最小値を数値的に探すことにより超対称粒子の質量行列に現れるCPの破れがHiggs sectorに誘起するCPの破れを求めた。この方法を有限温度に拡張し、Higgs sectorでのCPの破れの温度依存性を調べたり、相転移の強さがHiggs質量やstopのsoft massにどのように依存するかも調べた。(Prog.Theor.Phys.Vol.101の論文) 相転移が1次転移の場合、相転移温度での有効ポテンシャルを用いて運動方程式から2相の境界に生じる電弱泡の関数形式を定めた。特に顕わなCPの破れが小さいが、2相の境界領域で自発的CPの破れと同様の機構によりCPを破る位相がO(1)になる可能性を我々は指摘していたが(Prog.Theor.Phys.Vol.99の論文)、それを実現するMSSMのパラメータ領域を特定できた。2つのHiggs場の期待値の比(tanβ)が5以上であり、最も軽いHiggs scalarとpseudoscalarがある関係を満たしていることが必要であった。 1つのパラメータの組について、charge transportによって生成されるバリオン数の評価も行った。有限温度の有効ポテンシャルによると相転移温度付近のtanβは温度補正を受けて大きくなり、top quarkのその温度での有効質量がbottom quarkやtau leptonとは逆に大きくなるために、chiral charge fluxへのtop quarkの寄与は小さくなり、tau leptonの効果が最も大きくなることが分かった。これらの結果は投稿中の論文(hep-ph/9903276)で発表されている。
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